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2008年 01月 08日

弟にしか思えない

夏休みが始まる終業式の日私はまったく無謀な高校一年であった。高校生活も夏休み前にはすっかりなれたころである。この頃には実は同じ美術部の2年上の先輩のことが気になっていた。あこがれの先輩という事である。平均的高校一年と較べて純情だったのかどうかはよくわからないのだか、当時の私としてはこの気持ちをどうしたら善いのか自分なりに悩んだのである。まあよくある恋煩いのではあるのだが本人にとっては大問題。なにせどういう風にすれば恋人、恋愛、デートができるのかよくわからないのである。そんなたいそれたものではものではなく単に一緒に歩いたり、お話がしたいだけだったのかもしれない。もちろん同じ倶楽部の先輩なのでお話は沢山しているのだ。でもそうじゃない。そんな話ではなくて具体的に言葉で表現すれば「めぐみ先輩好きです」「うんわたしも好きよ」という会話である。で考え付いたのはとにかくこの思いを告白せねばならないという事に結論ついたのである。つまり大胆にも待ち伏せをして「好きですめぐみ先輩」とずばり告白しようと計画したのである。そこで一番大切なのがその場所と時間でである。確実に出会えて他のやつらには知られない場所と時間を決めなければならない。そこでさんざん考えてでた結論が終業式の日の下校時間に先輩の自宅前であった。すでに住所も知っている。場所も確かめた。

そして終業式の日当日ついに犯行日いや計画実行日がやってきた。自分の学級が先輩のクラスより早く下校にならなければならない。しかも先回りをして適度な時間に先輩が一人で自宅前まで帰る確立にかけなければならないわけだ。これを逃すと厄介な事になる。とにかく夏休み前で気分が開放感でハイになっているときが絶好のチャンスなのである。相手の心理状態が大切なのである。気分が落ち込んでいるときは、問題を抱えている時に告白してもまずいのである。ベスト
コンデションで臨み対のある。さていらいらしながらもほぼ想像通りの下校時間になった。先輩のクラスはすでに終わったのか未だなのかは確かめようもなかった。とにかく急げ。事前に最短距離を行く通りも実地調査して自転車を飛ばす。先輩の自宅前にとも角ついた。あとは帰ってくるところを待つだけだ。落ち着け。あせるな。準備した最高の言い回しを心の中で復唱する。ここは純然たる住宅地ではないのだがやはり同じところでぽつんと長時間立つのは不自然である。周りにも怪しまれてはいけない。しかし玄関から目を離してはいけない。自転車はどうしようなどと落ちつない時間をどの位ここで経過したのだろう。案外短時間だったのかもしれない。ついにめぐみ先輩が近づいてきた。
「こんにちわ」
「やあ西山君どうしたん」
「いやちょっとね」
「?」
「あの。そのですね」
「?ふふっなあに」
「あの。ぼくあの先輩のこと好きなんです」
「うふふ。あはうふふ」
めぐみ先輩は思い切り声をだして笑い出した。むしろ爆笑に近いかもしれない
僕もなんだかおかしくなってつられて笑うが半分引きつっても入る
「ああおかしいわ~。西山君。ごめんごめん。とってもうれしいわ」
「うん」
「うふふ私も西山君のこと好きよ。わたしね弟がいるの。西山君と同じ一年生。学校は違うんだけどね」
「だからね。弟ね」
「うんわかった。じゃあ駄目ですか」
「うふふ。とってもいいお友達でいましょうね。」
「はい。どうも失礼しました」
「西山君。気をつけて帰るのよ」 
めぐみ先輩は笑顔で見送ってくれた。
いいお友達か。なるほどそういうことか。またいいお友達ができて僕の高校一年の夏は一足早く終わった。
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by youknow1957 | 2008-01-08 23:37 | 短文
2007年 10月 17日

夫婦

たまに行くコンサートの後なので、ちょっと洒落た感じのお店に入ってみる。案内されたテーブルは4人掛の丸テーブル。ウエイターに促され妻が座ってそれから私が座る番である。こういうテーブルの場合相手の対角線上の正面に座る場合と、45度になる隣に座ることもできる。私は45度に座りたかったが一瞬迷って、妻は正面の方がよいだろうと思い反対側の席に座った。メニューを見ながらオーダーをして食事も半ば、周りを見渡すとあたりはほぼ満員で若いペアばかりだった。こういうところで若い人たちに囲まれて食事をしていると、なんだか自分の若くなった気分で遠い昔を思い出したりもする。目の前のけして若くない連れを除けば・・・、もっともお互い様なので文句は言えない。さてそのペアの座り方であるが正面に座る組と隣同士の割合がほぼ半分づつぐらい二分されている。
まわりみてごらん、ペアの座り方。正面に座る組と隣同士の組と
あら。ほんといろいろあるわね。
僕は正面に座すわったけど、隣同士のほうがよかった?
いや正面がいいわよ
なんで?
だって隣同士だったらテーブル狭くなるでしょ
・・・・なるほどごもっとも
やはり私の予想通り。長年夫婦をやっていると、大体彼女の考えていることはわかるのだ。
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by youknow1957 | 2007-10-17 00:09 | 短文
2007年 09月 10日

カイコ

小学校6年の秋のことである。
クラスでちょっとした流行り遊びが広まった。
暗号ごっこである。とくに女子の中心だったメンバーが
一番盛んに使っているうちにクラス中に広がってきたのだ。
西山君は「カイコ」やで~とクラスのリーダーで
人気者の多賀子ちゃんがいいだして数人の女の子が
「西山君はカイコ・カイコふふふ」
「カイコなん?それどういう意味なん?」
「そんなんいうてしもたら暗号にならへんやん」
「そうや自分でかんがえよし」
「ええぼくカイコなんや。それってええ意味?それともあかん意味?」
「せやな~どっちか言うたらいい意味ちゃう」
「多賀子ちゃんはカイコ?」
「わたしはカイコちがう」
「陽子ちゃんは?」
「陽子ちゃんはカイコかな」
ふううそうなんや、なんか判らんけどまあいいか。
学校からの帰り道。今日はいつもよりなんだか世の中が穏やかで爽やかに思えた
カイコカイコ
カイコの暗号が解けたからである。
カイコは!
一文字ずつ文字が取り除かれている。
カワイイコすなわちカ*イ*コ、
カイコはかわいい子である。たわいもない暗号なのだ。
僕は多賀子ちゃんからみたら「かわいい子」なんだ。
そうだろうな多賀子ちゃんはクラスでも背が高く小柄な僕よりかなり高いから
可愛いってことになるのかな。
ううんまあいいか。可愛いっていわれた理由がなんであろうと。
うふふなんだかうれしいな♪
ただそれだけでいいのだ。
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by youknow1957 | 2007-09-10 23:10 | 短文
2007年 08月 17日

先輩

中学一年生の連休明けのとあるクラブ活動の日
連休が開けてのクラブは一通りのオリエンテーションも済んで
同級はもちろん先輩の顔と名前もだいぶ判りかけたころである
初めての油絵具のセットもまだまだ真新しく使い方も一通り教えてもらい
初めての風景画を描く事になった。
最初の風景画は校内を描くことになっているらしい
もちろん油絵具の使い方を覚えたのもうれしいが
ほかにひそかな楽しみがあった。
二年先輩の三年生のりえ子先輩のことである。
りえ子先輩とクラブの時間はいつもいっしょだ。
そして時々話すことが出来るチャンスもある。
なにかお話をしてちょっと笑顔が返って来れば
それこそ心は羽根が生えてふわりふわりとびあがるぐらいの嬉しさ。
まだ小学校を卒業したての中学一年生の春には
三年生の先輩は大人のおねいさんである。
優しくって綺麗で可愛くてまるで天使の様に思えるものだ。
だから今日もそれとなくりえ子意識する。
先輩はなかよし三人組と桜の木陰で校舎を描くらしい
私もその近くの炎天下の椅子に座る
さりげない近さが良いのである。けしてわざとではなくたまたまですよ位の距離だ。
今日も何とかチャンスを作って話をしないといけないが
お茶目で可愛い後輩作戦で笑わせないといけないのだ。
絵も描きたいけどそちらも気になってしかたがない。
それでも気を落ち着けてええとパレットに油壺をはさんで
溶き油を油壺にいれてと準備をしていると
先輩三人がこちらのほうに来るではないか「西山君わかる?」
「うん何とか判ります」
「ああここはまぶしいなあ、こっちへきよし」「うん」
なんと三年の女子先輩に囲まれて初めての油絵に挑戦することになったのである。
その中にはあこがれのりえ子先輩も
ドキドキ、ワクワク。
もてもて状態を下校途中のクラスのやつらにもしっかり見られている視線を感じる。
「西山えらいもててるやん」ニヤニヤ
もはや絵どころではなくなった。
りえ子先輩は一見純情そうにみえるのだが実際は結構積極的で
やたら話しかけてくる。ちょっとドギマギする私を楽しんでいるようだ。
油絵を描く時は制服が汚れないようにエプロンを掛けているのだが
さきほどからりえ子先輩が私のエプロンに盛んに何か油絵具でいたずら書きをしているようだ
もぞもぞする。
「なにかいてるの?」
「今見たらだめやで、もうちょっとまっててね」
「そうなんなにかいてるのん?」
「そんなんええからはよ自分の絵描きよし」
「そんなんいうてもS先輩かってまだ全然かいてへんやん」
それから数時間いやどれぐらいたったかおぼえいないがやっと彼女達から解放された
そしてそっとエプロンの先を見ると
「好・き・よ・とっても」とかかれその横にハートがそえてあった。
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by youknow1957 | 2007-08-17 00:03 | 短文
2007年 07月 30日

シャボン玉割れた

ちょっとした失言の後だった。
シャボン玉ふわりふわり君の所に飛んでいけ。
どんどん膨らんでいく僕の想い。
・・・でも一度はじけたシャボンはもう元には戻らないことをご存知ですか
と彼女
・・・大丈夫だよ、ほらこんなに沢山シャボン液が
小さな水色のポリバケツにいっぱいあるんだよ。
幾つでもシャボン玉ほらまた一杯できるよ
何度でも何度でもその想いはいつまでもでてくるんだ。
うふ、いかにもあなたらしい、楽天的な性格ですね。
と彼女は携帯メールを送信して電源を切ってしまった。
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by youknow1957 | 2007-07-30 00:03 | 短文
2007年 07月 29日

告白

仲良しグループの二人の会話
「ねえあの二人上手くいってる感じやね」
「うん、そうやな、お似合い、いいな。同じグループからカップルになれたらね。うらやましい」
「N君は?」
「えっつ僕?僕の好きな子?・・・・あの・・・グループ中の子やん」
「ええ。うそっ。ええっ、誰なん?」
「あっわかった!香苗」
「ちがうよ」
「ええ香苗かと思ってた。じゃあ恵」
「残念でした」
「あら違うのか。じゃあみーいちゃん」
「やなな。そんなん順番に聞いたらいつか当たるやんか」
「だめ。答えなさい。みーいちゃんですか」
「ちゃう」
「ええっちがうの、そしたら誰かな?・・・芳江?」
「あの~違います」
「あっ。まさか・・・・あたし?」
「うん、・・・そう。ごめん」
「え?ううん」
「・・・」
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by youknow1957 | 2007-07-29 00:42 | 短文